君がくれたモノ
莉奈に王だと知れた時、態度を変えられるのではないのか‥それが怖くて蒼は言えなかった。

「当たり前じゃん!そんなんで変わったりしないよ?」

莉奈は軽く答えた。けれど蒼にはそれが嬉しくもあった。
今まで出会って来た人間は、蒼が王だと知った瞬間に、友達だったのも忘れたかのように蒼に平伏す。それが蒼には寂しかった。

「莉奈はいい子だね」

蒼は莉奈の頭をそっと撫でた。
莉奈はドキドキしながら恥ずかしそうにしている。そんな莉奈を、蒼は心から愛おしく思った。


少しの間二人は町を歩き続けた。
そして立ち止まった先には、立派な宮殿がそびえ立っている。

「うゎ‥すごいねーこの建物」

赤い門があり、中は先が見えない程広い屋敷が広がっている。

「莉奈が帰る日までいる場所だよ」

「え!?」

驚くような事も、蒼は普段と変わらない顔で冷静に言う。

「俺の住んでる場所なんだ」

莉奈の蒼へのイメージが、ガタガタ音を立てて崩れていく。
以前蒼が自分の過去の話しを聞かせてくれて以来、莉奈は勝手に蒼は貧しい生活をしているのだと思い込んでいたのだ。

莉奈の考えていた事とは、全くの逆だった。
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