君がくれたモノ
驚きを隠せない様子の莉奈を見て、蒼は屋敷の入り口に置いてある木造の椅子に腰掛け話し出した。

「俺が剣術士としてこの町に雇われ出した頃、この国の王が淋江に移住して来たんだ。
そして俺の噂を聞き付け、この屋敷に呼ばれた」

莉奈も蒼の隣に座り、話しを聞いた。

「王は11歳で剣術士の仕事をしている俺に同情した。
俺を‥引き取りたいと言って下さったんだ」

「すごい‥よかったじゃん」

今まで辛い目をしてきた蒼が、幸せになれるチャンスだった。莉奈はそう思った。
ところが‥

「でも俺はそれを断った。」

遠くで鳥の鳴き声がした。
蒼は遠い目でそれを見ている。

「え‥何で?」

蒼は腰に挿さった剣の鞘を握りしめ立ち上がった。

「もう、誰にも迷惑をかけたくなかったんだ。」

「蒼‥」

莉奈は胸が傷んだ。

わずか11歳の男の子が大人に振り回され、やっと来たチャンスにもすがらずに生きて来たなんて‥。

神様‥あなたはどうしてそんなに不公平なのですか?
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