君がくれたモノ
頭の中で莉奈を呼ぶ声が聞こえる。

「だれ‥」

莉奈の異変に気付き、蒼は莉奈の肩を揺する。

「莉奈!?どうしたんだ!」

莉奈には蒼の呼びかけが届いていない。
頭を抱えながら頭の中で聞こえる声に反応した。

(莉奈‥!)

この声‥お母さん‥?
‥違う‥

「‥桜!!」

この声は間違いなく桜だ。昼間の桜とのやり取りが、また目に浮かんだ。

(お願い莉奈‥返事して!)

桜の声が一層現実味を帯び頭の中で響き渡った。
桜は必死に莉奈に呼びかけている。

誰かと話しをしている莉奈を蒼は抱きしめた。

「莉奈‥!しっかりしろ!」

少し涙ぐんだ声になっていた。

親友だと思っていた桜。でもそうじゃなかった‥!

「もう‥ほっといてよ!」

莉奈がそう言った瞬間、頭の中の桜の声が、プツンと音を立てて途絶えた。


頭痛はなくなり、莉奈は呼吸が荒く、額にはいっぱいの汗をかいていた。

蒼はずっと、莉奈を抱きしめていた。


「親友だと思っていたコに‥呼ばれたんだ。
もう大丈夫だよ。」

莉奈はそう言って蒼を抱きしめた。


どうして桜の声が‥


その疑問だけが莉奈の中に残った。
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