君がくれたモノ
「莉奈、まだ寝てる?」

夜の10時をすぎても起きてこない莉奈を心配し、蒼は莉奈の部屋の前に立っていた。

莉奈から返事がない事に蒼は胸騒ぎを覚えた。

「開けるよ?」

そう言って扉を開けると、莉奈はベッドで眠っている。
その姿を見て安心し、莉奈の寝ている側に腰かけた。

「莉奈‥」

突然蒼の前に現れた莉奈。どこから来たのかもわからない。
けれど‥
いつも一人で寂しかった生活を、彼女が変えてくれた。

蒼はそっと莉奈の頬に触れた。

「‥蒼?」

それと同時に莉奈は目を覚ました。

「ごめん起こした?」

「ううん。ちょっと悲しい夢見てたみたい」

莉奈は起き上がり、笑いながら言った。
しかし目には涙が浮かんでいた‥

「お父さんとお母さん‥どっちがアタシを引き取るかで揉めてる夢。マジサイテーな夢ー」

笑っている莉奈の目からは大粒の涙がこぼれた。
蒼は莉奈を抱き寄せる。

「‥大丈夫だよ。俺がいる」

蒼がいる。
そう思うだけで、莉奈は強くなれる気がした。


窓の外を見ると、空は晴れ月が出ている。
明かりを付けなくても月明かりで部屋を明るくしてくれるほどだ。
そして何の音さえも聞こえない静かな夜だった。
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