君がくれたモノ
「はい‥この指輪を見られてました」

指輪を手に取り蒼に渡した。蒼に触れた男の手が、その大きな男の体からは想像できないほど震えている。

「そしたら後から男の方が来られて‥」

「なに!?どんな男だ!」

蒼の嫌な予感が当たっていた。令に間違いない。
普段温厚な蒼も、この時ばかりは我を忘れたように必死になる。

「髪の短い方です‥その女性を連れて行こうと‥」

男はその時の光景を思い出したのか、顔が真っ青になり頭を抱えて座り込んでしまった。

「女性は男に連れて行かれたんですね?」

蒼の鼓動が速まる。

「‥はい。」

その言葉が帰ってくる事は分かっていた。
分かっていたはずなのに足が震える。

とにかく早く莉奈と令を追わなければ‥

「大丈夫です。もう心配いりません。その男はどちらに向かいましたか?」

王として店の男を安心させなければならない思いと、莉奈を助けたくて焦る思い‥蒼の気持ちは複雑に入り乱れる。
< 52 / 65 >

この作品をシェア

pagetop