君がくれたモノ
「3年前は俺まだ、あいつがこの国の王って知らなかったんだ」

「えー!?」

莉奈は令の言葉に心底驚いた。
莉奈を連れ去った令に対して、すでに安心しきっている。

「ありえなくない?だってアタシが総理大臣知らないのと同じでしょ?」

総理大臣という例えの意味が、令はわかっていないようだ。

「仕方ないだろ!俺ずっと旅に出てて‥王が死んだなんて知らなかったんだ。」

令は蒼との過去を莉奈に話してくれた。
きっと‥誰かに聞いてほしかったのかもしれない。

令と蒼が知り合ったのは、今から9年ほど前の事だった。

幼い頃に病気で父親を亡くし、令は母親と二人で生活していた。
蒼の住む家のすぐ向かいに住んでいた令は、毎日の様に養父母から虐待を受けている蒼を見て、子供ながらに養父母に対して殺意さえ覚えた。

あいつはナゼやり返さないんだ。

同じ年齢と知った時には、虐待される蒼の姿を見る度にそう思った。

剣術の腕だけには自信がある令は、すでに10歳にして大人とも対等にやり合えるほどの腕の持ち主。
その腕は、母親だけの貧しい生活を支える糧ともなり、子供の頃から【なんでも屋】としてどんな仕事でも引き受けていた。

例えそれが人を殺める仕事であっても‥
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