君がくれたモノ

信じるコト

「今日でお前を見るのは最後になりそうだな」

莉奈の隣に立つ令が低い声で言った。
先程とは比べものにならないほどの殺気が感じられる。

「剣を抜け、蒼」

令に言われた蒼は、ゆっくりと手を剣の鞘に近づけた。

「だ‥だめ蒼!やめてよ!」

莉奈が叫んだと同時に、蒼は鞘ごと剣を地面に投げ捨てた。

「俺はお前と斬り合うなんてできない!」

蒼は叫んだ。
見たことのない蒼の辛い顔だった。

「凛を俺は刺していない‥」

「やめろ‥!」

蒼が3年前の話しを持ち出すと、令は顔色を変えた。

「俺は見舞いに行き、凛の部屋に聖剣を置き忘れていただけなんだ!」

「や‥やめろ!何もかも遅いんだ!」

令の心は揺れていた。
心が揺れ、凛を忘れるのが怖くて今まで蒼の言葉を聞かないようにしてきたのに‥

「令‥!蒼を信じてよ!」

今なら間に合う。
莉奈はそう思った。
しかし‥令には響かない。

「もう‥遅いんだ。」

愛していた人の死、その現実を受け入れる為には誰かを憎むしかなかった。

その相手が例え親友であっても。
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