君がくれたモノ
「だったら‥刺せ。構わないよ‥俺の命は令に助けてもらったからな‥今でも変わる事なく感謝してる」

両手を広げて笑顔で令に言う蒼。
幼い頃、虐待の悪夢から救ってくれた令は、蒼にとって【親友】などでは片付けられない程の存在だった。

「蒼‥やだよ‥」

莉奈の手が震えた。


ガチャ‥


令が剣の鞘を抜いて蒼の目をじっと見た。
そして静かに口を開いた。

「置いていかれたと思ったんだ‥」


え‥


「蒼が王になって‥俺は寂しかった。凛を殺したと思い込んで‥お前を憎しみの対象にした」



グサッ



全てがスローモーションの様に映像がゆっくり流れる。

莉奈の隣で血を流した令が倒れるのが見えた。
蒼がこっちに向かって走ってくる。


一体何が起こったのか‥莉奈は分かるまで少し時間がかかった。


令は自分の体に剣を貫通させたまま倒れた。


「令!!」


二人の声が一つとなり、令に駆け寄る。

「3年‥間も‥悪‥い‥」

「話すな!止血しなければ!」

血が大量に出ている。
それでも久しぶりに蒼と話すのが嬉しいのか、令は笑顔になる。

「俺‥さ‥蒼が‥遠い存在に‥思えて‥よけい必死‥になって」

笑いながら言う令が余計に辛い。
莉奈は涙でもう前が見えない。
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