君がくれたモノ
「令は‥すごく幸せな顔してるよ。」

莉奈が顔をあげると、いつの間にか辺りは暗くなっていた。
一日がすごく長かった‥そんな気がする。

「帰ろうか‥莉奈」

後ろの方に、馬車の迎えが来ているのが見えた。
蒼に支えられ、莉奈は馬車へと乗り込む。

莉奈の頭に、少しの間令と過ごした記憶が行き交い、また涙が込み上げてきた。

「これ‥」

蒼が小さな布に包まれた物を差し出しているのに気付くまで、少し時間がかかった。

「なに‥?」

布を開いてみると、昼間莉奈が露店で見ていた指輪だった。

「‥あっ」

「莉奈、気に入ってたみたいだったから‥」

令に連れ去られる前に蒼を待っていた場所で見ていた指輪‥
朱く光り輝いていた。

「うん‥ありがと‥」

指輪は右手の薬指にぴったりはまった。
その瞬間、着物屋の娘茜の顔が頭に浮かんだ。

「茜さん‥蒼の事好きみたいだよ」

指輪を貰うのは、何か恋人同士の特別な儀式の様に感じられた莉奈は、まるで抜け駆けをした気分になる。

「あー‥みたいだね。」

「みたいだねって‥茜さん本気みたいだよ?蒼は茜さんを」

蒼は茜をどう思っているのか聞きたかった。

「俺は莉奈が好きだよ」
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