雨、ときどきセンセイ。
「確かに、約束してましたけど」
センセイはそう切り返した私に驚いた顔をして見せた。
きっと、私が必死に否定して、センセイに『誤解だ』って訴えるって思ってたと思うから。
「だけど、約束の時間はもう過ぎたので」
私は時計を見て、自分のカバンを肩に掛けた。
そんなこと言って、結局は約束していたことは変わらないのに。
屁理屈のように真正面からセンセイに言い放つ。
……センセイの計算通りにばっか、なりたくない。
「まぁ、バス停すぐだしな。帰れなくはない、か。」
窓の外を見つめてセンセイが言う。
なんだろう。
この駆け引きみたいな感じ。
以前のセンセイなら、もうとっくにセンセイの方から教室を去ってる気がする。
じゃあ、どうして?
「どうして」
私の発した音に、センセイが窓から私に視線を移す。
「どうして……? 車に乗せる気も、傘だって、もう貸す気もないくせに」
こんなふうに雰囲気で私を引き止めるの?
いつだって、突き放せるはずなのに。
だけど、そうしないから――いつまでも、私は動けない。