雨、ときどきセンセイ。
「……なんでそう思う?」
なんでって……。
本当、センセイってわからない。
「洞察力がある」なんて言われたけど、やっぱりそんなのウソだ。
だって、全然読みとれないよ。
「……ズルイ」
「だから、なんで」
「だって」
掴めそうで掴めない距離に、いるんだもの。
「もう、いい加減にしたら」
その声に私たちは目を向けた。
教室の後ろのドアに立っていたのは水越で。
水越は私じゃなくて、センセイをずっと見ながらゆっくりと教室に入ってきた。
「『興味ない』っつーんなら、放っとけよ」
ますます暗くなる教室で、水越はやけに落ち着いた声でそう言った。
「ふっ」とセンセイが笑うと水越が少し声を大きくして言い返す。
「何笑ってんだよ?」
「……いや。俺が吉井と“密会”していたとでも思ってるのかと思って」
「――っ!」
「まぁ、そうかそうでないかはどう思おうと勝手だけど、感謝して欲しいくらいなのにな」
「『感謝』……?」
センセイは水越から私に視線を戻して、ニッと笑って言う。
「“約束の時間”延長されてるんだから」
それだけ言うと、センセイはふいっと出口へと体を向けた。
そして歩き出そうとした時に水越が信じられない言葉を放った。
「……前の日曜、見てたんですよ」
その内容に、先生もさすがにそのままピタリと動きを止めた。