雨、ときどきセンセイ。
「車に香川センセと乗るところを」
水越は相変わらず真剣に、目を逸らさずに続ける。
……だけど、何を言うの。
いまさらそんなことセンセイに言ったって、上手く返されるだけだし、第一前に私には『身に覚えがない』ってちゃんと否定してることなのに。
「しかも、その翌日、香川センセは同じような服を着て学校に来てた」
その否定を知らない水越が、そのことを何か言うのも無理ない気もするけど……でも……。
「水越っ……!それは私たちの勘違」
「いや。事実だ」
急に私を見て水越が少し気まずそうな顔をして言い切った。
どうしてそんな言い切れるの?
だって、センセイは“違う”って教えてくれた。
だけど、水越がいたずらにうそをつくとも思えなくて。
「……そうなんだろ? 真山センセ」
水越が再びセンセイに目を向けた時には私もセンセイの横顔を見た。
センセイはさっきから全然動かない。
ただ黙って水越の話を聞いていた。
そしてようやくセンセイの手が動くと、めんどくさそうにその手を首に回して頭を少し傾ける。
「……俺、面倒なのは嫌いなんだって」
その言葉は初めの方に聞き覚えがある。
音楽室で初めて会った時にそう言っていた。
その『面倒なのが嫌い』っていうの、すごくわかる程センセイは今不機嫌そうに見える。