雨、ときどきセンセイ。


センセイはその携帯を手に取ると、特に操作することなく少し見てからそのまま方向転換してこっちに体を向けた。


ああ!きっとメールかなんかが来て、バイブでバレたんだ…!


防音の音楽室からはそんな音くらいじゃ何も自分の所に届かないから私はそう想像する。
私はセンセイに見つからないように、その場に勢いよくしゃがみこむ。だけど、ふらついて態勢を崩して不覚にもドアに鞄を軽くぶつけてしまった。


―――防音…だけど…さすがに外から鞄をぶつけたら…静かな教室には聞こえたかも…。


そんなことを思ったけど、音楽室を確認する勇気もなくて、暫くそのまま息を潜めて体を丸くしていた。

だけど、やっぱり落ち着かなくて態勢はそのままに少し顔を斜め後ろへと向けてみる。

暗い廊下のタイルが視界に入り、そのまま首を回すと―――…


「“優等生”吉井がねぇ…」
「!!!」


少し開いた音楽室の扉から覗く黒い靴。
それを捕えたと同時に頭上から降ってきた声。

さらにゆっくりと私が顔を上げると、そこには“いつもの”表情をした真山センセイが携帯を手に腕を組んで私を見下ろしていた。




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