雨、ときどきセンセイ。
「それ、どういうこと?」
水越が眉間にしわを寄せてセンセイに聞いた。
すると、センセイが横目で水越を捕えて淡々と答える。
「そのままの、意味」
「『そのままの』……って」
水越がハッキリと答えにならないようなセンセイの返しに戸惑ってるようだった。
私はと言うと、全て今までに聞いたことのある返事にただ黙って聞いているだけだった。
そして、センセイが溜め息混じりに若干イライラしたような口調で付け足した。
「そんな面倒な恋愛、するわけねぇだろ」
その一言に、今の会話から行けば香川先生とのことだってわかってはいたけど心に深く突き刺さった。
同僚の女性教師ですら『面倒』だと思うなら……。
……絶対に生徒(私)は圏外だ。
「でもッ」
「『でも』なんだよ」
水越が焦るように食い下がったら、センセイが鋭い視線で水越を刺す。
その視線に水越は負けながらも、懸命に説明しようとしていた。
「……本人が……そう言ってた、から」
「『本人』……?」
水越の言ったことを繰り返したのは私。
センセイは黙って水越を見ていた。
『本人』て、誰?
センセイじゃない。
そして相手は……香川先生?
香川先生が何を水越に言ったっていうの?
「……へぇ。『本人』が、ねぇ」
私が必死に混乱しそうな頭を冷やしていると、センセイは全く焦る様子も問い質すこともせずに独り言のように言った。