雨、ときどきセンセイ。
「吉井が真山に迫ってる、って」
私は目を大きく見開いた。
……確かに、間違いではない気もするけど。
でも、ちょっと誤解を招くようなその言葉に違和感を覚える。
“迫ってる”って言う程、私センセイに何かしたかな。
それにしても、そんなことを水越が言うなんて。
そう思った時に水越が続けたことを聞いてさらに驚いた。
「そう、聞いたんだ。香川先生から」
「かっ……??!」
聞き間違いかと思った。
この雨の大きな音で、上手く聞き取れないのかと。
「『真山先生は迷惑してるから、彼氏ならちゃんと管理してあげて』」
水越の放つ言葉は、香川先生に言われたそのままの言葉なんだろう。
まだ続く内容に、聞き間違えなんかじゃないってわかる。
「迷惑……?ってオレ、聞き返した。そしたら『あの日、見てたでしょう?』って。あの、日曜日。ここの停留所で止まった時に、バスん中からあの二人を見つけた時、なんとなく、香川センセがこっちを見てる気はしてたけど……まさか気付いてたなんて」
――つまり、こういうこと。
“私と真山先生は恋人同士だから、邪魔しないで”
“その証拠を、その目ではっきりと見ていたでしょう?”
香川先生は偶然居合わせた水越を使って、私にそう釘を刺したかったんだ。