雨、ときどきセンセイ。
もう何度目だろう。
冷たい風が頬を撫でる。
コートを着ていてもやっぱり寒くて、いつもならすぐにでもバスに乗り込みたい気持ちになるのに。
それでも、その中、逢いたい人がいる。
その人を待っている間の雨なら、煩わしさなんて感じない。
そう思いながら空を仰いでた。
「……傘、持ってたんだな」
後ろから聞こえた声にゆっくりと振り向く。
そこに居るのは、逢いたくて逢いたくて、堪らない人。
「車には、香川先生乗ってたんだ?」
「……」
「傘(これ)なかったら、今日は乗せてくれてた?」
別に責め立てる言い方はしてない。
ただの確認。
私はさしていた折り畳み傘を少し上にあげるようにしてセンセイに尋ねた。
「んなこと聞いても、現実に今傘持ってるだ、ろ」
センセイが答えた時に私はその手を離した。
私の水玉模様は風に飛ばされて数メートル後ろに飛ばされた。
誰が車の隣に乗ったって、誰が隣に並んで歩いたって。
結局センセイの心が寄り添っていないなら、そんなことどうでもよくて。
それよりも、今の私にはセンセイと一緒に雨に濡れることの方がよっぽど近く感じることが出来る気がするから。
そして、センセイと雨の日は、やっぱり晴れの日よりも静かな空気を感じる。
そんな空気を共有してたい。