雨、ときどきセンセイ。
「…別に優等生なんかじゃ」
私は音楽室の入り口付近に立って、床を見つめながらそう言った。
「性格、成績共に問題なし。加えて進路も推薦が決まってる。この上ない程“イイ生徒”だ」
「……ケータイくらい、普通だし」
「一応、校則違反なんですけど」
前列の机にだるそうに腰掛けているセンセイが淡々と私に話す。
案外“校則”とかにうるさいのか…なんて私は心で溜め息をつく。
私がセンセイの言葉に対して何も言わずにいたら、センセイが追い打ちを掛けるように言う。
「―――没収」
「えッ!」
さすがの私も慌てて顔をセンセイに向けた。
するとセンセイが私に向けてる顔が、なんだか教壇に立っているセンセイとはまた違う気がして息を飲む。
少し狡いというか、意地悪いというか。
そういう顔をして私を見て言った。
「俺のカンが正しければ―――吉井は急に変わった。俺に何かある?」
私は目を見開いてセンセイを見た。
やっぱり気付いてたんだ。だから、今日の帰りもああいう視線を私に向けてたんだ。
でも、私はそれに対しても何も答えることが出来なくて、ただ瞬きもしないでセンセイを見つめ返すだけだった。