雨、ときどきセンセイ。
ほんの僅かに、センセイの目の色が変わった気がした。
そして気付いたら……。
「――本当、バカだな」
私の頭上でそう聞こえてきたのはセンセイの声。
私の顔はセンセイの胸の辺りに埋もれて、初めてセンセイの香りを感じた。
「センセ……」
一瞬、無くなった私たちの距離。
だけど、センセイの中から顔をあげようとしたときに、その距離はまた元に戻されてしまった。
捕まえられそうなのに、また届かない。
そんなふうに胸を締め付けられる思いをさせられる、センセイの腕の長さだけの距離。
「……俺は、お前に過去の自分を重ねて」
「本当に、それだけ……?」
最後まで“先生”である部分が、センセイを引き止めてるの?
私は縋るような目と声でセンセイに精いっぱい問う。
その私の目を見て、センセイの瞳が揺らいでるのがわかる。
「センセイと私は違う」
みっちゃん。私、バレンタインまで、待てない。
「それに、センセイとその“昔の先生”も違う」
センセイ。
「私は『バカ』だから。センセイの立場とか自分の立場とか……そういうの考えられないほど、コドモだから。だからっ……」
お願いだから、もう一度、抱きしめて――。