雨、ときどきセンセイ。

……もう、これで本当におしまい……?


前のように走り去る元気もなくて、私はゆっくりと歩を進めて校門へと向かった。

その間、後ろからはなにも音が聞こえない。


追いかけられるわけでも、車で立ち去られるわけでもない。

この距離は変わることがない。


そしてこの想いも――……。


「……変えらんないよ……」


結局、私じゃだめなんだ。
センセイを、“先生”から変える程の力はなくて。

同時に私はやっぱり生徒としか扱われられないのだ、と痛感した。


バスが行ったばかりであろうバス停に着いた私は、焦点が合わないままにぼんやりと立ち竦む。

その時、ポケットの中から振動を感じた。


【まだ一緒? 大丈夫?】


そのみっちゃんからのメールを見て、思わず電話を耳にあてた。


『もしもし、梨乃? もう水越居ないの?』
「……うん」
『え、大丈夫? なんか言われた? まさか水越に限って何かするってことはないと思ってたけど』
「……みっちゃん。私、バレンタイン……だめだ」
『え?』


いつの間にか、こんなにも好きになってた。

センセイと私は同じ空気を持っていて、寄り添いたいと思うのが当たり前だと。


でも、そう感じてたのは私だけ。

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