雨、ときどきセンセイ。
『ちょっと、梨乃!? ちゃんと説明して』
耳元に聞こえるみっちゃんの大きな声に、渇いた笑いを返す。
その時に、もう行ってしまったと思ってたバスが、静かな空にエンジン音を響かせて視界に入った。
ああ。雨でバスが遅れてたんだ。
「みっちゃん、バスに乗るから。ごめんね」
『バス? ちょっと、梨――』
すっと携帯を持つ手に力が抜けて、辛うじて落とさないようにしながらバスに乗り込んだ。
いつもの下校時間とはずれているからバスの中はそこまで混雑していない。
だけど、私は椅子に座ることが出来なかった。
濡れたスカートは冷たさと重みを増している気がする。
まるで、今の自分のように。
そのまま何も考えられず、ただバスに揺られているうちに降車するバス停に着いた。
バスから降りるとすっかり雨は上がって光が射しているのにも関わらず、私の目からは全てがモノクロに思えるほど、暗く寒いもので。
その景色は変わることなく、俯きながら家に辿り着いた時に足音と声が同時に聞こえた。
「……梨乃!」
「みっ、ちゃん……」
駆け寄ってきたのはみっちゃん。
汚れた制服と、疲れ切った私の顔を見るなり心配そうに私の肩に手を置いた。
「ま、まさか、本当になんかあったの……?!」
みっちゃんの質問に私は小さく首を横に振った。
それを見て、みっちゃんはホッとしたようで、心なしか肩に置いていた手も強張っていたのが柔らかくなったみたいだった。