雨、ときどきセンセイ。
「私、部屋で待ってるからお風呂行ってきなよ」
みっちゃんに言われるがまま、まだ誰も居ない家に2人で上がり、私は浴室へと向かった。
脱衣所の鏡で自分の姿を見る。
「……ふっ。これじゃ、みっちゃんも驚くよ」
乱れた髪に、濡れたコートに制服。
そのコートを脱ごうと襟元に手を掛けた時にみっちゃんが肩に置いてくれた手の感触を思い出す。
そして、それに連鎖するように、センセイの手の感触も……思い出す。
ぐっと自分で自分を抱きしめるように手を交差させて肩を抱く。
それから閉じてた目を開けて、シャワーを浴びに浴室へと入った。
……不思議と泣けない。
人って、悲しすぎたら涙も出ないのかな。
ただただ、何も考える気も、動く気にもなれなくなって。
シャワーの温度すらも感じない。
いつまでも感じるのは、あのセンセイの手と、香り。
それと、センセイの心の音――。