雨、ときどきセンセイ。
「あ、あったまった? 風邪ひかないかな。大丈夫?」
部屋に戻ると何度も私の部屋に来たことのあるみっちゃんは、慣れた様子で床に腰を降ろして待っていた。
「うん。待たせてごめんね」
私はタオルで髪を拭きながらベッドに腰を掛けた。
「や、ほんと、びっくりした。まさかとんでもないことされたのかと」
「大丈夫大丈夫。水越がとんだ濡れ衣着せられて可哀想だよ」
ふふっと笑いながら私はみっちゃんに言った。
そんな私を見て、みっちゃんが真顔で返す。
「……無理、しないで」
みっちゃんにそう言われても、よくわかんない。
無理をしない、なんて、それが無理な気もする。
けど、堪えなくても涙も出ない私は無理なんかしてない気もする。
「……わかんないの」
自分が無理をしてるのかどうか。
自分が今どういう状況なのか。
どうしたら、ここから抜け出せるのか。
両手で顔を覆ってそれだけ口にした。
そしたらギシッと小さく音を上げてスプリングが軋んだのが聞こえて、みっちゃんが隣に来てくれたのがわかった。
「梨乃が、吐きだしたいことだけを言ってくれればいい。何も言いたくないのなら、今はそれでもいい」
言いたい。話したい。聞いて欲しい。答えて欲しい。
でも、どう伝えたらいいのか、わかんない。
頭の中がごちゃごちゃな訳でもない。
けど、何かを話そうとする度に、整理する度に……あの苦しさが、鮮明に思い出されるから、声が出ない。