雨、ときどきセンセイ。
それでもみっちゃんはいつもとは違って、急かしたり、何かを問い詰めたりしないで、ただ私の背中を擦ってた。
「私……水越を巻き込んでる」
脈絡もない。
話の構成もぐちゃぐちゃで。
それでも思いついた言葉から口にしていくことしか出来そうになかった。
だけどみっちゃんは私に合わせて聞いてくれてる。
「水越に、辛そうな顔を何回もさせてる」
「それは梨乃のせいじゃないでしょ。水越が梨乃を好きだから、自分で巻き込まれに行ってるのよ」
淡々と答えてくれるみっちゃんは、変わらず背中に手をあててくれてた。
「……センセイは、私と似てるんだって」
「“似てる”?」
「……恋愛に不器用なところ、とかだと思うけど」
「そう。それで?」
……それで。
それで、センセイは私と居ることを拒んだ。
「『だから』だめだ、って……」
そう。そして教師と生徒ということも手伝って、センセイは突き放したんだ。
「……それ、よくわかんないな」
みっちゃんがぴたりと手を止めて、正面を向きながら考え込むように漏らした。
「結局、私にはセンセイを変えられなかった。そんな存在じゃなかったんだよ」
センセイにあと一歩を踏み出させる価値は、私にはないんだって。
過去から引っ張り上げる力もなかったんだって。