雨、ときどきセンセイ。

「ハッキリ、“対象外”って、そう言われた?」


……え?

“対象外”……言われてるような、けどそこまでハッキリでもないような……。
すごく曖昧にしか思い出せない。


考え込む私にみっちゃんは続ける。


「例えば、梨乃が逆の立場だったらどう?」
「逆……??」
「分かりやすく言うと、梨乃が教師で、相手が生徒だったら」


私が教師?

物凄く想像し辛いけど。しかも相手が生徒って、センセイが生徒ってことでしょ?


うーん……と、宙を見て難しい顔をしながら私は想像していた。
みっちゃんはさらに続けた。


「自分の感情だけで、踏み込めない立場と性格なんじゃないの?」


その言葉にハッとした。


都合のいい解釈だと思う。
でも、そんな風に思ったりもした。

自分よりも人を優先させる性格だ、と。

もしも、その私の考え方が合っていたとしたら。


「生徒(梨乃)の為に、セーブしたんじゃないの?」


本当にそんなこと、あるだろうか。

だけど、そんな期待もしてしまう程、さっきまでのセンセイは近かった。
それは身体的距離だけじゃなく、精神的距離でも感じたこと。


「私なら、このままなんて中途半端で諦めつかないな。卒業の時までに問い詰めてハッキリさせちゃう」


グイグイ行けそうなみっちゃんなら、本当にそうするだろうな。

目を丸くしてみっちゃんの発言を聞いてそう思う。


「そうしたら、泣けるんじゃない? 今度はちゃんと」
「えっ……」
「だって、今日の梨乃、泣くに泣けないって顔ずっとしてるけど」


すごいなぁ。みっちゃんは。
そんなことまで見抜かれてると思わなかった。

だけど……。


「『今度は泣ける』って、フられる前提……?」


クスリと笑って言いながらみっちゃんを見た。

そしたら、「あ、つい」っていつものおどけた顔のみっちゃんがいて心が軽くなった。


< 137 / 183 >

この作品をシェア

pagetop