雨、ときどきセンセイ。
「ハッキリ、“対象外”って、そう言われた?」
……え?
“対象外”……言われてるような、けどそこまでハッキリでもないような……。
すごく曖昧にしか思い出せない。
考え込む私にみっちゃんは続ける。
「例えば、梨乃が逆の立場だったらどう?」
「逆……??」
「分かりやすく言うと、梨乃が教師で、相手が生徒だったら」
私が教師?
物凄く想像し辛いけど。しかも相手が生徒って、センセイが生徒ってことでしょ?
うーん……と、宙を見て難しい顔をしながら私は想像していた。
みっちゃんはさらに続けた。
「自分の感情だけで、踏み込めない立場と性格なんじゃないの?」
その言葉にハッとした。
都合のいい解釈だと思う。
でも、そんな風に思ったりもした。
自分よりも人を優先させる性格だ、と。
もしも、その私の考え方が合っていたとしたら。
「生徒(梨乃)の為に、セーブしたんじゃないの?」
本当にそんなこと、あるだろうか。
だけど、そんな期待もしてしまう程、さっきまでのセンセイは近かった。
それは身体的距離だけじゃなく、精神的距離でも感じたこと。
「私なら、このままなんて中途半端で諦めつかないな。卒業の時までに問い詰めてハッキリさせちゃう」
グイグイ行けそうなみっちゃんなら、本当にそうするだろうな。
目を丸くしてみっちゃんの発言を聞いてそう思う。
「そうしたら、泣けるんじゃない? 今度はちゃんと」
「えっ……」
「だって、今日の梨乃、泣くに泣けないって顔ずっとしてるけど」
すごいなぁ。みっちゃんは。
そんなことまで見抜かれてると思わなかった。
だけど……。
「『今度は泣ける』って、フられる前提……?」
クスリと笑って言いながらみっちゃんを見た。
そしたら、「あ、つい」っていつものおどけた顔のみっちゃんがいて心が軽くなった。