雨、ときどきセンセイ。
「梨乃ちゃんもだよ! 彼氏だけ撮られても面白くないっしょ?」
その言葉に目を丸くした。
『彼氏』??
ぽかんとして何も言えずにいる私に代わって腕を引かれる水越が答えた。
「……オレら、別に付き合ってねーけど」
「えっ!! うそ!」
「うそをわざわざ卒業の日に吐くか」
「てっきり……てか、わりと皆そう思ってるよ?」
本当に驚いた顔をしてその子が水越と話をしている。
その驚いた顔、今私もしてるんだろうな。
誰からもそんなこと言われたことなかったのに、一体どのくらいの人がそんな勘違いをしてるんだろ。
呆然としてる私を尻目に、水越が鼻で笑って冗談混じりに言う。
「へぇー。通りでこの前チョコ、貰えなかったわけだ」
「んなこと言って、あたし見たけど? あんたがチョコ、断ってるとこ」
「……気のせいじゃね?」
それも、知らなかった。
私、聞いちゃだめなこと聞いちゃった気がするよ。
あの、義理チョコを受け取った時の水越を思い出して、私は手をぎゅっと握った。