雨、ときどきセンセイ。

キラリ、と何かが私に訴えるように光った。

自席に着くために振り向く直前の、その輝き。

それに気付いた時に、また一気に蘇る。


センセイへ対しての、“特別”という感情が。


私はその卒業証書から、バッと顔を上げてセンセイの顔を見た。

センセイと目が合う。
けど、表情は一切変わらない。

多分、私は顔に出ているだろう。

一縷の望みを瞳に浮かべた、間の抜けた顔を。


「あ、ありがとう……ございます……」


辛うじてそう呟いて踵を返すと、高鳴る心臓の音が周りに気付かれませんように。なんて思いながら席に着く。

席に着くなり私は卒業証書の端っこを手で覆い、目だけで周りを窺った。


――誰も、気付いてない……よね?


ドクンドクン、と心音は速まる一方。
その証書に添えた手は熱く、少し汗ばんでる。

誰にも怪しまれないように、ゆっくりと。

その右手を少しずつ少しずつ、自分の体の方に移動させる。


見間違えなんかじゃない。

この手にあるものも、夢なんかじゃない。


私は息を止めて、教壇の前で一瞬だけ見たそれをもう一度確認する。


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