雨、ときどきセンセイ。

「だっ、て……! あんな修羅場、急に」


聞いちゃったら、理解出来るわけないじゃない。

……え? 待って。
もしかして、さっきの香川先生との話、あれってワザと……。


「私に、聞こえるようにしたんじゃ」


あの時、センセイは私がドアの前にしゃがみこんでいることを知っていた。
なのに、そのままドアを閉めずに話をするなんて、センセイに限って“ミス”だなんて到底思えない。


そこまで言うと、センセイが相変わらず小馬鹿にしたように笑ったまま答えた。


「説明するの、得意じゃないから。多少手間が省けるかと思って」


い、いや。いやいや。
それでも全然理解不能なんですけど……。


私が声に出さずに頭でそう返していると、センセイはそれをも読み取ったかのように言う。


「ああ、でも、結局説明しないとダメみたいだな」
「わ、私じゃなくても理解出来ないと思いますけど」


久しぶりだからか、思いっきりセンセイのペースに負けてる私。

センセイは「はーっ」と息を吐いて、ドアにもたれかかって腕を組んで聞いた。


「で? 何から?」
「え……? な、何からって……」


そう問われると、頭の中ですぐに組み立てられない。
私もなかなか国語力ないのかも。


それでも黙って待ってくれているセンセイ。
そんなセンセイは今までで一番、話しやすいような空気を纏っていて、私は自然と落ち着いていた。



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