雨、ときどきセンセイ。

香川先生に、私とのことを何か言われて脅迫されていたとしても。
でも、事実通り「関係ない」と突っぱねることもセンセイなら出来たはず。

でも、きっとそれをしなかったのは……。


「生徒(わたし)を庇って……?」
「『面倒なことは嫌いだ』って何度も言ってんだろ」
「え? だったら、もうほっといてくれてれば……」
「あの状態からほっといたら、余計面倒なことになる。少し考えたらわかるだろ」


そこまでするなんて、あの香川先生が……って思うけど、実際裏の性格はそうなんだろう。
だったら、私を不利にするような行動に出る可能性は十分にあって……。


「結局水越まで首突っ込んできて、この上なく面倒なことにされたけどな」


いや……でも結局私がセンセイに近づいたから、そんなことになったのは変わらないんだよね。

だから、私が巻き込まれたのは自業自得ってやつ。


「す……すみません」


私は申し訳なさで、肩を竦めて俯きながら謝った。


ああ。もしかして、この説明があの卒業証書に付けられていたメモの『忘れ物』なのかな……。


そんなことを落ち込みながら考えて、思い出した。


「あ、そうだ!」


私の手に握られたままのもの。

センセイの大切なもの。


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