雨、ときどきセンセイ。
私のその言葉を聞いた水越は、特に驚く様子を見せるわけでもなく。
少し間を置いてから口を開いた。
「それを言うために、ここで待ってんの?」
どうしよう。
なんて説明すればいいのだろう。
水越に対してはもう、何かを誤魔化そうだなんて思ってはいない。
けど、今、自分とセンセイとの間がどんな状況なのか、どう口にすればいいのかわからない。
だって、ついさっきの出来事で。
まるで夢だったかのような感覚のままだし、まして何か確約したわけでもそういう言葉を交わしたわけでもない私にはまだ“絶対”の自信がない。
私が返答に困って目を泳がせていると、水越の奥に黒い影が視界に入った気がして、再びそこに視線を戻した。
その正体を一瞬で確認して驚いた。
「『それ』って言うのはなんのことだ?」
その声と同時にドアがガチャン、と静かに閉められた。
そしてその声に飛びのくくらい水越は驚いて振り向いてた。
「……な、なんで」
「ドア、ちゃんと閉まってなかったからな。聞こえた」
「センセ。この際、ハッキリしてくれよ。“最後”にさ。前みたいに誤魔化すのはナシで」
会話を少し聞かれてしまった水越は初め、気まずそうにしてた。
だけどすぐに立て直して浅く息をひとつ吐くと、センセイと向き合って言った。
「こんなんで卒業しても……オレら、しばらくこっから動けなくな」
「じゃあ、諦めろ」
水越の言葉に被せるようにセンセイが手短にそういうと、その視線は私に向けられていた。