雨、ときどきセンセイ。
「なんにも言わないのはッ……!」
センセイへの道を阻むように、ズイッと水越の視界に入り込んで私は続ける。
「センセイが、なんにも言わないのは……“私の問題だから”」
「吉井の?」
「……私がどう思って、“何を信じるか”。だから、センセイはそれ以上説明や弁解をする必要性を感じなくて」
「そんなの詭弁だ!」
私の必死な説明を水越は容易く一蹴した。
『詭弁』と言い切られると、それに対抗する反論も出てこない。
だけど、そんなんじゃない。
本当の本当に、センセイは私に最後まで考えて、決断するチャンスをくれてるんだ、と私は思うのに。
それを上手く表現して、センセイの弁護も出来ない。
その自分の力のなさと、もどかしさ。
そして情けなくもなった私の目には、悔しくて込み上げてきたものが滲む。
そんな私に今日の水越は容赦無く攻めてくる。
「だってそうだろ? 本当に必要なら……傍に居たいと想う相手なら、そんな格好つけたことなんか言えないくらい必死に自分に振り向かせたいハズだ」
水越のまっすぐな目とその言葉が胸に刺さる。
そう言われたら、何も言い返せない。
だって実際自分もそうだった気がする。
何にも変えられなくて、センセイを振り向かせたくて。
みっともなくても、格好悪くても、それでも必死で縋り付いてた。
そんなことはセンセイはしない。
それって、それが私とセンセイとの気持ちの大きさの違いだったりするのかもしれない…。
不安を煽られた私はつい、水越から目を逸らしてしまった。
「結局、教師(大人)ぶって深追いをしないで……吉井を翻弄して。真山の気持ちなんてその程度って風にしかオレには思えない。違うか? “センセ”」
ぐうの音も出ない。
私は水越も、センセイも見ることが出来ずにその場に立ち尽くした。