雨、ときどきセンセイ。
颯爽と教室を後にするセンセイを、しつこくも頭を動かさないように目だけで追った。
だけど、今日は一度も私を見てくれなかった。
相変わらず廊下でも女子に声を掛けられてるセンセイは、やっぱりそれも上手く交わしていなくなっていった。
ちくしょう…。
私の中で、小さな反抗心と意地に火がついた。
冷静に考えたら、センセイを気にするなんて時間の無駄だってわかるんだけど。
…だけど、だけど。
あの雨の日と放課後の音楽室のセンセイに。
心を奪われたのだからもう仕方がない。
自分でも、〝それで、なにをセンセイに求めてるの?“って思う。
その答えは今明確なものはない。
でもなくっても、目が、耳が、心がセンセイを追うのだから。
だったらもう突き進んでやろうと、携帯を握る手に力がまた入る。
そして次の瞬間、ガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がる自分の足は、頭で考えるよりも先に廊下へと走りだす。
生徒で溢れる廊下を縫うように、私はセンセイの背中だけを追い掛けた。
「…っ…真山センセイッ…!」