雨、ときどきセンセイ。
雨、ときどき好きな人。


再び、しんと静まり返った音楽室には二人きりになった。


「アイツもなかなかしつこそうなやつだな」


センセイがぽつりと言った。


『なんかあったらすぐ言えよ。そん時は一発やってやる。卒業したから停学とか関係ないしな』


水越は最後にそんな嫌みを笑ってセンセイに言うと、音楽室を出て行った。


でも、今『アイツも』って……。

その言い回しに、私はチラッとセンセイを見上げる。
センセイは目を細めて私を見ると、意地悪く言う。


「吉井と、同じ」


……やっぱり‼
どーせ、『しつこい』って思ってるんだってわかってたし!
大体センセイ、自分もそうだったって言ってなかった⁈


赤いままの頬を膨らませてそう思った。


「……ぶっ!」


膨らませた頬は一瞬で、大きな手に潰された。両頬を挟むようにされた私は上手く発音出来ない。
だけど、懸命に言葉を投げかける。


「ひょ、ひょっお!(ちょ、ちょっと!)」
「……職員室から外、見てみても居ないし」
「へ……?」
「まさか、と思ってここに戻れば、話し声が聞こえるし」


センセイ、ちょっと……怒ってる?

私は驚いたまま、センセイを黙って見上げてた。


「……さっき俺がここに入る直前、水越が言ってた『それを言うため』ってなに?」


私はそんなこと話していたことすら忘れていたのに。

センセイは頬にあった手を離して私を見つめて答えを求めてる。

あ。

不意に思った。
センセイは怒ってるんじゃなくて、もしかして……。


「や、妬いて……ます? か……」


まさか、あのセンセイが。
という気もするし、自信なさげにしか言えなかった。

その私の質問に、何も言わないセンセイをチラッと見てみる。

けど、センセイは特に表情が変わったようにも見えなくて、なんだか私の勘違いだったのか、と恥ずかしい思いになる。


もう……!
センセイ、何か言ってよ。

こんなんじゃ、ただの自惚れた恥ずかしいイタイ女子じゃない……!


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