雨、ときどきセンセイ。
カラダが熱い。
脳が痺れてる。
センセイの体温と、香り。
いつの間にか繋がれた片手は、まるでそこが心臓部のように脈打つ感覚に襲われる。
涙目を堪えながら見えたのは、センセイの満足気なズルい笑顔。
「私ばっかり、今日まで苦しい思いして……『待ってろ』ってひと言言ってくれたらいいのに」
チャンスは幾らでもあったはず。
プリントでも、放課後でも。
チョコを受け取った後とかにでも。
そのひと言をくれていたら……。そうしたらその言葉だけで、卒業までおとなしく待っていたのに。
私が不貞腐れるようにしてセンセイを責めることを口にすると、ふいっと視線を落として言われた。
「……そんな言葉で縛っておきたくなかったから」
ボソボソと言い訳のように話すセンセイの顔を覗き込むようにして、私はさらに責める。
「それって、私が水越に心変わりするかもって考えたってこと?」
「……いや」
即否定を口にしたセンセイに、私はつい感情的に言ってしまう。
「私が簡単に心変わりするなんて思ってなかったでしょ。だからそうやって焦ることなんかなく、余裕で今日まで過ごせてたんでしょ。計算が得意なセンセイにはとっても簡単な問題だったんでしょ⁉」
息継ぎもままならないくらい、ものすごい勢いで言い放ち、俯いた。
だって、ふざけてたわけじゃないってわかってても。
この2ヶ月の私のことなんて、手に取るようにわかりながら眺めていたと思うと悔しい。
「あー……やっぱ無理」
そのセンセイの言葉に顔を上げる。
『無理』……。私とは、無理。
そんな。せっかく一度は手を繋いだのに……そんな簡単に言い捨てないで。
涙目で懇願するようにセンセイの表情を探る。