雨、ときどきセンセイ。
私のその呼び声は、センセイだけじゃなく、センセイの周りにいた女子達をも振り向かせた。
そんな瞬間に少し気まずさを感じたけど、それも一瞬だけ。
もう、私の視界にはセンセイしか映してないから。
「吉井?」
「…あ、あの……」
センセイが私の名前を口にする。
でもその次に繋がる言葉を私は出せずに、ただ携帯を握りしめて立っていた。
そんな少しの間でも、近くにいた女子は不審そうな顔つきで私を見る。
別にあんた達に怯んだ訳じゃない!
私はただ…ただ、センセイに――――…何を、伝えようとしてるの?
「ああ。そうだった。配って貰いたいもの渡すんだったな」
「―――え?」
さらりとセンセイが私にそういうと、目で何かを合図するように私を見つめた後、背を向けた。
そして一歩で囲まれていた女子たちを置き去りにする。
私はそんなセンセイの背中が遠くなっていくのを呆然と見ていた。
けど、センセイが角を曲がるときにちらりとまた私に意味深な視線を向けた時に、ハッとして私は女子を横切ってセンセイの消えた角まで駆け寄った。