雨、ときどきセンセイ。
「し、失礼します…」
挙動不審なくらいにきょろきょろとしながら小声でそう言って、私は職員室へと足を進めた。
センセイはあれから一度も私を振り向かない。
そんなセンセイの後ろ姿だけを見ながら、私はここに立つ。
ギッと軋む鈍い音を立ててセンセイは自分の席に着くと、その机の隅に綺麗に置いてあったプリントを手に取り、私に差し出した。
「ちょうど良かった。これ、明日までっつってクラスに配っといて」
そして“業務連絡”を私に伝えると同時にセンセイは机の上に目線を移した。
……私が呼び止めた理由なんて、興味無いってこと?
そう思わされるくらい、センセイは未だに視線を上げてはくれない。
横に私がまだ立っているのなんて気付かないわけないのに。
かといって、今、職員室(こんなとこ)で話せることなんて限られてる。
どんな言葉をセンセイに投げつけようかなんて纏まらないまま、私はセンセイを追ってたから…だから、実際今になっても何を言えばいいかわかんない。
けど、このままこの手にあるプリントだけを持って教室に戻るのも癪で―――…。
そんな葛藤していた時にセンセイの顔がこちらを向いた。
『癪』とか心で生意気言ってるわりに、いざセンセイの顔が上がれば動揺する私。
それでもなんか喋って、この間をなんとかしなきゃ…!
そう思ったときにセンセイの形のいい薄い唇が動いた。