雨、ときどきセンセイ。

「ありがと」
「…別に」


本鈴が鳴る前に託された仕事を終えて、私は手伝ってくれた水越にお礼を言うと、水越は少し照れくさそうに視線を外して、ぶっきらぼうに答えた。

そんな水越を見ると、やっぱりみっちゃんの言っていることはホントかも、と思ってしまう。
そんな雰囲気でなおさら水越になんて話掛けていいかわからなくて、ちょっと困る。

そこに助け舟のチャイムが鳴り響いた。

それと同時に英語の先生が教室に入って来た。
私はそのまま自分の席について、ほっと一息吐いた。


私は急いで英語の教科書を机から引っ張り出す。
机の上には今自分が配ったプリントが乗っていた。


卒業アルバム、か。
本当、早いな。あと3カ月くらいもあるのに。
けど、もう3カ月しかないのか…。


頬づえをついてそのプリントに視線を落したまま考える。

進路はもう短大に推薦が決まっている。
あとはソツはなく学校生活を送って、卒業して―――春になったら、新しい生活をスタートさせる。
それまでの3カ月というただのカウントダウン。だったはずなのに。


こんな、あと僅かの高校生活に、センセイが―――。
真山センセイの顔が、声が、私の中で消えないで、残ってるから。


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