雨、ときどきセンセイ。
授業が始まって、私は教科書とノートを開いただけで、ボーっとプリントを見つめていた。
このプリントを私に手渡した時も、“いつもの”真山センセイだった。
そのあとの香山先生への対応も。
私(生徒)はおろか、同僚の香山先生ですらも、寄せ付けない。
自分の内側を見せることなんて、あり得ない。
だったら―――…
だったら、卒業(最後)までそうして欲しかった。
音楽室の真山センセイと話をしてから、また、“内側”のセンセイと向き合ってみたいって思っちゃう。
ああいう顔とか、声とか…カノジョとかにはするんだろうな。
センセイ…カノジョ、いるのかな。
居そうだし、居なさそうだし。
あの絶対に他人を寄せ付けない線引きは、センセイ自身の為なのかな…それとも、カノジョの為だったりするのかな。
シャーペンをカチカチカチと鳴らして伸びた芯が落ちる。
2本目の芯が出てきた所で、私は勢いでプリントにその芯を滑らせた。
吉井梨乃、購入にマル、そして―――
『メンドーってどういう意味だったんですか』
そう小さく一言添えた。