雨、ときどきセンセイ。

「梨乃遅ーい」


いつもの中庭に、お弁当を持って急ぐと、みっちゃんはまだ手を付けずに待ってくれていた。


「ごめん! 食べてていーのに!」
「こんなとこで一人で食べる勇気、あたしにはなーい!」


ツンとしてみっちゃんは言った。
でもそれはわざとだとわかる私は、笑って謝り、みっちゃんの隣に座った。


「どこいってたの?」


別に深い意味じゃなく、詮索してるわけでもない。
みっちゃんの質問はただ自然に出てきたものだってわかる。
でも、その質問に続く質問を想像をして、困るな…なんて思いながらも、私は箸を咥えたままぼそりと答える。


「職員室…」


『なんで?』とか『何しに?』とか返ってきたら、どう言おう。

私は箸を口に入れたまま、手元のお弁当に視線を落として黙っていた。
すると、予想してなかったみっちゃんの返しに拍子抜けする。


「あ、進路の? 推薦とか羨ましいよーほんと!」


みっちゃんが自ら納得したように話を進めてきたので、私は罪悪感を感じつつもそれに乗っかることにした。


「…うん。でも、そんな難しいとこじゃなかったし。みっちゃんは理数系得意だし、羨ましいよ」
「理数系得意ったってねー。看護師になるわけでもないしなぁ」


…ごめんね、みっちゃん。

今はまだ、私の中に留めさせておいて。
きっと、時期がきたらみっちゃんだけには話すから。
だから、もう少しだけ。


私は静かに微笑んでみっちゃんの話を聞きながら、残りのお弁当を平らげた。



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