雨、ときどきセンセイ。
『一緒に』ったって…。
「バスも逆じゃん」
私と水越は校門前で二人並んで立っていた。
私が言った言葉に、水越は開き直って言う。
「バス待ち時間潰せていーじゃんか」
「でも水越のバス、走れば間に合ったんじゃないの」
「駆け込み乗車は好きじゃねぇ」
「なにそれ」
門によりかかって、笑い合う。
水越は、確かにいい奴。
多分女子にもそこそこモテるだろうし、一緒にいてラクだ。
だけど、異性に“ラク”って思われるのってどうだろう?
…かといって、センセイ相手みたいな毎日って良くも悪くもドキドキしすぎる気もするから疲れそう。
疲れそう、って思っちゃってるのに、私の行動は矛盾してるな。
「あー…来たな、吉井のバス」
遠い地面に焦点を当て、ぼーっと考え事をしている間にどうやらバスがきたようで、水越が教えてくれた。
「なんか、先になってごめんね」
「別に。じゃあまた明日」
「また、明日…」
いつもと同じように別れを告げて、私はバス停に急ぎ、乗り込む。
下校時刻からずれたこの時間のバス内は空いていて、余裕で座ることが出来た。
ふと、後部座席の窓へ視線を向ける。
水越はまだあの門の前で、このバスを見送るように立っていた。