雨、ときどきセンセイ。

ちょうど先週の今日、携帯を忘れた私は音楽室でセンセイと遭遇した。

それから何度か放課後に音楽室を覗きに行ったけど、センセイは居なかった。


ある仮説を立てる。

センセイは毎日あそこに来る訳じゃない。
毎週木曜日。
その日の放課後だけに、あの場所へ向かうんじゃないのかな、と。


そして今日はその木曜だ。

今日こそ、水越にも、誰にも見つからないように。
私はこっそりとあの音楽室へと足を向ける。


小窓から差し込む夕陽は、日に日に赤さを増している気がする。
陽が落ちる時間が早くなっているんだ。

そんなことを考えながら明るさに目が馴れてきた時に人影が確認できた。


―――やっぱり。


そーっとドアを開け、ひっそりと音楽室へ踏み入れる。


「……また忘れモンか?」


背を向けている筈のセンセイが、まるで私が来るのをわかっていたかのように外を見ながら一言言った。


「…センセイは、なんでココに?」


なんで木曜日に、音楽室に通うの?
窓(そこ)から何かが見えるの?
誰かを待ってるの?


私は2列目の机辺りに立ち止まったまま、センセイの反応を待った。

すると、センセイはやっぱり振り向くことをしないまま、夕陽に向かってぽつりと呟いた。


「―――好きだから」



< 34 / 183 >

この作品をシェア

pagetop