雨、ときどきセンセイ。
「今日講習あるから!」
“ごめん”という仕草でみっちゃんがそういうと、すぐに教室からいなくなってしまった。
正直、ちょうどよかった…かも。
そんなことを思って、心で自分も謝ってみる。
私は恵まれてて、運良く推薦も決まってて、贅沢な放課後の使い方をしてる。
もちろん、短大で困らないようにするために勉強を全くしないわけじゃないけど。
だけど、やっぱり自由な時間は周りより少し多いから。
今日もふらりと非常階段で時間を潰す。
ああ。でも今日は居ないはず…。
そう思ってるのに、どこか心の片隅で期待してしまう、この愚かな気持ちはなんだろう。
……いや。もう、わかってるんだけど。
でも、それを言葉にしてしまうと、気恥かしいような、切ないような想いになるから。
そうして一人百面相を終えた後、その期待を胸に、そっと階段を昇る。
でも、4階に差し掛かるところで、その期待も虚しいものになってしまった。
上から、聞こえてくる音。
管楽器や、弦楽器……打楽器までも壮大に。
あの静かなセンセイの空間は、今はまるで存在していなかった。
本当に、別世界だ。
センセイがいる音楽室って――――。