雨、ときどきセンセイ。
吹奏楽部が悪いわけじゃない。
だけど、私の溜め息の理由はそれのような気もして。
階下に行くに従って、小さくなっていく音色が心を憂鬱にさせてるようだ。
会いたいのに、会えない。
それは担任としてじゃなく、数学教師としてでもなく。
真山恭一という一人の男の人である、あの時間に会いたくて。
重い足取りで玄関を出る私は、この期に及んでまだ、“会えるかもしれない”という淡い期待を現わしてた。
俯きながら外に出る。
それから、ふと、空を見上げてみた。
―――雨。そういえば、あれから降ってないな。
人に話せば笑われるであろう、大したことのない出来事。
だけど、あの雨の日。
あの無数の雫の間から見えた、黒い傘に隠れたセンセイが。
ずっと、私の思考を占領してる。
音楽室と、雨と。
今、センセイに会えるのはこのどちらかしかない気がして。
そう思ったら、私は滅多に思わないことを思ってしまった。
“雨が、降りますように”
そうして、幻影を追い掛けるように、無意識に足が向かっていたのは職員駐車場だった。