雨、ときどきセンセイ。

次の瞬間―――…。


「??!」


私に一歩近づいたセンセイが肩に触れて、グイッと下に押した衝撃で私は尻もちをつく。

急なことに、声も出せずに目を見開いてセンセイを座りながら見上げるだけ。


「あ、真山先生!」
「ああ。香川先生もお帰りですか」
「ええ。もうどうせ明日も来るのなら…と思って」
「僕もです。じゃあ、気をつけて」
「……真山先生も。さようなら」


思わず口を手で抑えてしまった。

ドキドキと、理由がわからない心音や、息すらも届いてしまいそうで。

そしてきっと、瞬きするのも忘れていた。
私の潤んだ瞳は、きっとそのせい。


「悪い。ちょっと乱暴だった」
「い…いえ…」


その時、私は偶然気が付いた。

そういいながら、きっと無意識に私に差し伸べようとした自分の手を、故意に引いたことを―――。


「……香川先生、きっとセンセイの車に乗りたかったんだ」


私はセンセイの手を見ながら、自力で立って言った。

きっと、“その手に触れられたい”。

そう思う気持ちは私と一緒なんだ。
さっき最後の別れの時の間が、私にはそう感じたし、確信した。


「どうだかな」
「センセイ、香川先生のことだって、本当は気付いてるんでしょ?」


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