雨、ときどきセンセイ。
ちらりとセンセイが送った視線の先を振り向いた。
そこには校舎の影に立ってる水越の後ろ姿があって――――。
「み…てたの?」
この間、校門前で一緒にバスを待っていたところを。
「路線、反対方向なのにな」
「別にそういう関係じゃ…!」
「ま、そんな感じだろうな。でも明日、どうなるかなんて誰にもわからない」
「ちょっ……」
「これ以上居たら、怪しまれて俺が迷惑だ」
最後のセリフは、もうセンセイに戻ってた。
バン! と、車の戸が閉まる音と同時にエンジン音がやけに大きく響いて聞こえた。
センセイの車はそのまま動きだして、公道を去っていく。
けど、私の耳にはずっと、白い車のエンジン音が聞こえているようだった。
「…何か言いたいことあるんじゃないの?」
そのエンジンの音が残っているまま、私は水越に近づいて声を掛ける。
水越はゆっくりと振り向いて、鞄を反対側に持ち直して答えた。
「…帰ろうぜ」