雨、ときどきセンセイ。

「あっぶねぇな…」
「あ、ああ…ごめん、平気。ありがと…」


なんでここに水越が?


そういう顔をしていたんだろう。
水越は、それを声にしなくても自ら答えてくれた。


「過去問とか買いに。オレんちの方デカイ本屋ってないからな」
「ああ…偶然だね…」
「…おお。それより本当、調子悪くないのか?」
「――大丈夫」


―――ウソ。

ほんとは大丈夫なんかじゃない。


目の前に居る水越に焦点は合わせてるけど、私の意識の見てる先はもっとずっと遠く。


「あ、バスきたぜ。オレも今日はバス一緒だから」


心配そうに笑ってくれるクラスメイト。
私はその心配そうな顔に、上手く笑顔で応えられているだろうか。


水越が後ろからついてきて、私を空いている席へと誘導する。
休日のバスのわりに混んでいたけれど、一席だけ空いていたそこに、私は落ち着いた。

横に立つ水越を一瞬見上げて目が合うと、なんとなく心の動揺が伝わってしまいそうで、ふいっと目を背けてしまった。


だけど―――背けた先は窓の外。

そこからの景色が、一番今、胸に突き刺さる気がして私は自分の膝元に視線を移した。


こんなにも…こんなにも、動揺するなんて。


自分で自分に驚きを隠せない。
心のどこかで思っていたはず。

のめり込んだらイケナイ、本気になっても幸薄だ。

こんな風に傷つくのがオチなんだから――――と。


それでもまさかこんなに深く傷つくなんて。


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