雨、ときどきセンセイ。

「で、で、それで?!」


5分休みだというのに、待ちきれないって言うみっちゃんに押されて、廊下の隅で昨日の話をする羽目になる。


「それで…うーん…よくわかんないけど…」
「なになになに! オッケーしなかったの?」
「…してない」
「えぇー」


こんなとこで話してたら他の人にも聞こえちゃうかもだし、最悪、水越本人に聞かれちゃうよ!


必死で、興奮するみっちゃんを抑制しつつ、私は話を終わらせようとする。


「とりあえず、それだけ。だから別に何も変わってないよ」
「変わってないことないじゃん。これから猛アプローチが待ってるね」


ちょうどその時チャイムが鳴った。
それでもなかなか動こうとしないみっちゃんに教室に戻るように促す。


「やーやー。でもとうとう告ったかぁ! やるなぁ、水越」
「ちょっと、声大き―――」


周りの生徒は皆、教室に戻っていた。
廊下にいたのは私とみっちゃんだけで、後ろの入り口から教室に入ろうとした時だった。


コツっと足音が聞こえた。

先に目に入ったのはその音のした靴。
そこからゆっくりと視線を上げていくと――――。


「センセイ…」


そこに立っていたのは真山センセイ。


「えっうそ! やばっ」


みっちゃんは私の声にそう言ってそそくさと席へと戻って行った。

私は暫くそこから動かなかった。動けなかった。


―――今の、聞かれて…た?


ドクンドクンと心臓の音が全身に響く。
目が合っていたセンセイは、ふ、と小さく笑って目を伏せた。


「吉井、本鈴鳴り終わったぞ」


そしてセンセイは隣のクラスへ入って行った。

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