雨、ときどきセンセイ。

センセイが隣の教室に消えて行ってすぐ、また同じ方向からコツコツと足音が聞こえて私は急いで身を翻した。

自席に戻る途中に、水越と目が合う。


水越も、今の気付いてたのかな…。


そんな思いから、やっぱり気まずくて目を逸らして席に着く。

椅子に座った瞬間に前のドアから香川先生が入ってきた。


「――号令お願い」


にこりと柔らかく笑って教壇につく香川先生。

起立して頭を下げ、再び腰を下ろそうとした時に何か私の中で引っかかった。


「えーと、じゃあ今日は、前回の復習からね。プリント配ります」


そんな私に気付くはずもなく、香川先生は授業を進めていく。
プリントを人数分前列の生徒に配って歩く。

私の列に来た先生をじっとみて、思った。


――似てる。

昨日の、センセイの横に居た人に。


勿論顔は見えなかった。
でも、髪の長さとか、体の細さとか。

それに、今日、“赤い服”だ。


「吉井ープリント回せよ」


後ろの男子が私をつついて来て我に返る。


「あ、ごめん」


プリントを回して、机の上に向き合っても、頭の中はもう授業なんか入る隙間がない。


昨日、ハッキリと見えたわけじゃない。
長い髪に赤っぽい服装だっただけで。
そんな人、いくらでもいるし…昨日は学校だって休みだし………。


そこまで考えて、思い出した。

この前の放課後に聞いてしまった、センセイと香川先生の会話。


土曜日も学校に出ることが常なら、日曜日だってあり得なくない。





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