雨、ときどきセンセイ。
ピンポーン……と、すごく遠くで音がする。
ピンポーン。
今度はもうちょっと近く聞こえる。
そしてパチリと目を開けた。
ああ。思いきり寝てた……。
今、何時……?
携帯を手探りで探したけど見つからなくて、部屋の掛け時計を確認した。
14時…。だいぶ寝たよ…。
その時3度目のチャイムの音が聞こえて、ゆっくりと体を起こした。
ベットは窓際。
そして、私の部屋は玄関の真上。
強い陽射しに目を細めて、そーっと窓の下を覗き見る。
そこに見えたのはスーツの男性。
セールスマンかな?
その割に随分身軽なような…。カバンらしいカバンも持たずに……。
私はその怪しい訪問者をレースのカーテンの隙間から観察していた。
そして、徐々に光に目が慣れた頃、その訪問者は諦めたようで玄関に背を向けた。
その姿に思わず窓を勢いよく開けてしまった。
「せっ…センセッ…?!」
その声とさっきの窓の音で、下にいた人物―――センセイが、顔を上げた。
ど、どうしてここに…⁈
夢でも見てるんだろうか。
まだ頭はちょっとぼんやりするし、だいたいこんな昼間にセンセイが私の家にくるはずがない。
ああ。やっぱり夢か。
そんなことを思って、何も言わずに窓から顔を出していると、センセイが額に手を添えて影を作りながら言った。
「…届け物、渡しに来た」
その声を聞いたら、やっぱり夢なんかじゃない。
だってこんなにリアルに、クリアに。
私の耳に届いて、目に映る。
「い、今っ…下に!」
私は慌てて、自分が今どんな格好をしているかとか考えもしないで部屋を飛び出した。