雨、ときどきセンセイ。
パタン、と閉まったドアの向こうで階段を降りる足音が遠くなっていく。
その足音をぼんやりと夢の中にでもいるような気分で聞き入っていたけど、ハッとして慌てて窓からセンセイが出てくるであろう玄関を見下ろす。
そして気づかれないようにそっと、カララ、と窓を開ける。
少しして、昼下がりの静かな外からカチャンと扉が閉まる音がして、センセイの姿が出てきた。
……えっ!
思わず声が出そうになった。
だって……。
「戸締まり、しとけよ」
私が窓(ここ)から見ているのを当然かのように見上げたから。
驚くことなく目を合わせてきたから。
「…わかってます」
私の返事を聞いたら、センセイはもう振り向かないで行ってしまった。
夢なら覚めないで。
ベッドの上の封筒を拾い上げる。
うそ。
夢なら、なんて。
本当はさっきの背中の温もりを感じた時から、現実だってわかってる。
昨日の天気のような心が嘘のよう。
結局、私の告白はないものになったような感じだけど。
それでも香川先生とのことがハッキリと否定されて苦しくなくなった。
センセイ。
その優しさが、仇になるかもよ?
そんな調子のいいことを心の中でセンセイに投げ掛ける。
にやけそうな頬を引き締めて、私は一人残された部屋で封筒の中を確認した。
そこには本当に課題が数枚。
あとは進路状況調査票と、保護者面談の案内。
どれもそんなに急ぐものじゃなさそうなのに。
それがなんだか嬉しくて、堪えきれない私はプリントで顔を隠すようにして笑う。
すとん。
その時膝の上に何かが落ちた。
ん……?
私はそれを拾い上げて手のひらに乗せた。
「……これ……」