† of Pupil~瞳の魔力
けれど、一二三さんは、そんな僕をこそ嘲った。
「人間はほかの生物を食らう。けれど、人間はほかの生物に食われることに対し、あまりに否定的。食の摂理は本来、弱肉強食。弱いから肉になる。それを、人間は自分にだけは当てはめない。これはものすごいエゴだと思わない?」
一昨日のように、一二三さんの眼差しの、それはそれはまっすぐでまっすぐなことで。
「……一二三さんは……」
「なに」
僕は、急に怖くなった。
怖くなって、だけれど、逃げることはできないと、訊ねていた。
「一二三さんは、人を食べたことが……?」
最後の言葉まで、はっきりと口に出してしまえなかった、情けない僕を、一二三さんは笑う。
「そんなこと」
と、呆気なく。
「当然ある。一二三の一族は、人食い鬼だから」
「……そ、っか」
今の質問の単語を、そっくりそのまま変えたらどうなるのだろう。
六条賢一は、人を殺したことが……?
当然ある。
六条賢一は、邪眼持ちなのだから。
たったそれだけの事実を、だけど僕が、そこまで呆気なくさらりと言うことが、できるだろうか。
「人間はほかの生物を食らう。けれど、人間はほかの生物に食われることに対し、あまりに否定的。食の摂理は本来、弱肉強食。弱いから肉になる。それを、人間は自分にだけは当てはめない。これはものすごいエゴだと思わない?」
一昨日のように、一二三さんの眼差しの、それはそれはまっすぐでまっすぐなことで。
「……一二三さんは……」
「なに」
僕は、急に怖くなった。
怖くなって、だけれど、逃げることはできないと、訊ねていた。
「一二三さんは、人を食べたことが……?」
最後の言葉まで、はっきりと口に出してしまえなかった、情けない僕を、一二三さんは笑う。
「そんなこと」
と、呆気なく。
「当然ある。一二三の一族は、人食い鬼だから」
「……そ、っか」
今の質問の単語を、そっくりそのまま変えたらどうなるのだろう。
六条賢一は、人を殺したことが……?
当然ある。
六条賢一は、邪眼持ちなのだから。
たったそれだけの事実を、だけど僕が、そこまで呆気なくさらりと言うことが、できるだろうか。